2000年代の著書

西尾幹二氏の要請を受けて、「新しい教科書をつくる会」に入り、氏の後にその会長に就任した(2004年辞任)。
美術史から日本の文化史、そして日本の歴史観そのものに広がっていく時期である。 これまでの日本の歴史観が、高い日本の文化を取り込めない階級史観であったことを批判し、あらたな日本の歴史観を追求している。 『国民の藝術』や『まとめて反論』『新しい日本史観の確立』などはこの運動の中で書かれた書物である。
『やまとごころとは何か』を書き、縄文時代から白鳳時代までの日本の文化と宗教の問題を論じ、日本の思想の原理を追求した後、現在は『天平「古典」文化とその時代』を執筆中である。
2008年、英文の『日本美術全史』(A Hisotory of Japanese Art)がAkita University Pressから出版された。
2009年、レオナルド・ダ・ヴィンチのイタリア語版がエデト―リ・ユニ―ティ社から出版され、3月2日ローマの日本文化会館で出版記念会が開催された。


  1. 『歴史のかたち 日本の美 論争・日本文化史』

    『歴史のかたち 日本の美 論争・日本文化史』

    徳間書店 2001年(平成13年)222頁

    日本の歴史・文化史を様々な角度から論じたエッセイ集。 網野善彦・梅原猛・蓮見重彦、さらに小林秀雄らも俎上にのぼっている。

  2. 『法隆寺とパルテノン 西洋美術史の眼で見た新・古寺巡礼』

    『法隆寺とパルテノン 西洋美術史の眼で見た新・古寺巡礼』

    祥伝社 2002年(平成14年)306頁

    奈良・京都の仏教美術を中心としたチチェローネ(案内書)。 法隆寺とパルテノンをはじめ、西洋の諸美術と比べながら、その芸術的特質を論じ、その価値付けから諸寺を訪問すべきと説いており、単なる名所旧跡めぐりと異なる案内となっている。

  3. 『まとめて反論 「新しい歴史教科書」の思想』

    『まとめて反論 「新しい歴史教科書」の思想』

    扶桑社 2002年(平成14年)200頁

    日本の中学の歴史教科書のマルクス主義的偏向を批判する運動に加わり、著者が「新しい歴史教科書をつくる会」の会長を務めたときの、その教科書に対する批判・非難に答えたもの。 共産党不破哲三議長、大江健三郎、「歴史修正主義」批判、美術史学会シンポジウムにおける千野香織氏らのフェミニスムからの批判にまとめて反論している。

  4. 『国民の藝術』

    『国民の藝術』

    扶桑社 2002年(平成14年)754頁

    筆者の日本の芸術に対する26章に及ぶ、原始から現代に至る大エッセイ集。 『新しい歴史教科書』をつくる会の運動とともに、日本の歴史・文化を新たな視点から再構築したもの。 歴史に従って如何に日本の芸術が変化したか、その文化的な営みを基礎に置きながら、その世界的な特質を論じており、日本文化論の”金字塔”と評価される。

  5. 『古都の美をめぐる 大人の旅』

    『古都の美をめぐる 大人の旅』

    扶桑社 2003年(平成15年)166頁

    奈良・京都の古寺の見所を芸術的価値に従ってガイドしたもの。 本ページの著書3のガイド・ブック版で、旅行案内として編集されている。

  6. 『日本美術 傑作の見方感じ方』

    『日本美術 傑作の見方感じ方』

    PHP研究所 2004年(平成16年)290頁

    日本美術史をどう見るか。 これまでの大著・専門書を統合して、わかりやすく新書版にしたもの。

  7. 『聖徳太子虚構説を排す』

    『聖徳太子虚構説を排す』

    PHP研究所 2004年(平成16年)206頁

    筆者のこれまでの聖徳太子論の集大成。 とくに2001年に五重塔の心柱が594年という伐採年代が測定されたのを基本に、法隆寺の非再建説を展開したもの。 聖徳太子が建てた斑鳩寺が、若草伽藍が焼けた後法隆寺となったもので、それはもともと飛鳥時代に建てられていたものとして、再建説を否定している。 同時に三経義疏が太子の著作であり、その思想がその生き方を貫いていることも論じた。

  8. 『レオナルド・ダ・ヴィンチの世界像』

    『レオナルド・ダ・ヴィンチの世界像』

    東北大学出版会 2005年(平成17年)

    著者30年以上のレオナルド・ダ・ヴィンチ研究の集大成。 同時に外国の読者のため、英文・伊文原稿を収めた。

  9. 『新しい日本史観の確立』

    『新しい日本史観の確立』

    PHP研究所 2005年(平成17年)

    西洋のキリスト教史観・ギゾーなどの近代史観・ヘーゲル史観・ランケ・ウェーバー・マルクス、そしてアナル派など、日本の歴史観に影響を与えた西洋の歴史観を研究し、、あた皇国史観・マルクス史観などによる日本史の見方を批判し、新たな日本の歴史観の確立を目指した歴史観の検討の書。

  10. 『支倉常長―武士、ローマを行進す (ミネルヴァ日本評伝選) 』

    『支倉常長―武士、ローマを行進す (ミネルヴァ日本評伝選) 』

    ミネルヴァ書房 2007年(平成19年)

    支倉常長(一五七一~一六二一)、織豊期~江戸初期の仙台藩士。伊達政宗や徳川家康の意を受けて太平洋と大西洋を渡り、遙かスペイン、ローマまで派遣された支倉六右衛門常長。日本人初の西洋使節として成功を収めたにも関わらず、従来不当に評価されてきた歴史的意義を検証する。

  11. 『モナ・リザは、なぜ微笑むのか』

    『モナ・リザは、なぜ微笑むのか』

    PHP研究所 2008年(平成20年)3月

    西洋美術史研究の第一人者が読み解く。名画が語る天才の真実。

  12. 『A History of Japanese Art』

    『A History of Japanese Art』

    Akita International University Press, June, 2008.

    Hidemichi Tanaka, professor emeritus of Tohoku University, is a leading historiographer of arts in Japan.

  13. 『日本史の中の世界一』

    『日本史の中の世界一』

    育鵬社 2009年(平成21年)

    日本史の中から、世界一と思われる50の項目をあげ、それがいかに世界的に評価されるかを論じた本。 戦後の自虐的な左派の日本史家も評論家たち、ジャーナリストたちの多くが、西洋・中国コンプレックスを根強くもっているために、これほど多くの事が世界一であったか、自信をもって指摘出来ないでいた。 筆者は50項目のうち、半分ほどを執筆し、縄文時代から江戸時代まで幅広く論じている。 とくに日本の知識人のコンプレックスを批判した「はしがき」「あとがき」は面白いという評価がある。

  14. 『Leonardo da Vinci』

    『Leonardo da Vinci』

    Editori Uniti, Roma – January 1, 2009